[MARUL-005] thamesbeat - PORTOPIA'81



Vol4からのリリース等もある神戸のトラックメーカーthamesbeatによる8曲入りのアルバム。 本人がアップロードして既に公開されているものだが、アルバムとしてのクオリティーが高かったので、急遽同じく神戸のトラックメイカーであるtofubeats a.k.a. dj newtownによるライナーノーツを加えてMaltineRecordsから再リリース。 ディスコかつアーバンなトラックをベースに軽快なラップが耳をひきつけます。

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 今回のアルバムは彼がmediafireで配布したものをtomad氏に紹介したところ、リリースが決まったものだ。テムズビートは私の大学の友人で、インターネットのサービスといえばsoundcloudくらいしかやってない。さすがにこれでは情報も何もないし、彼のことを少し紹介したい。

 3年前、大学にて私が所属するある部活動に彼はやって来た。 すっかり新入生は自分の入る部活に馴染み始めたくらいの季節だったろうか。 好きな音楽の欄に"テムズビート"と書いておいて実際はファンクやメロウグルーヴをこよなく愛する青年は、その部にあらかじめ僕が居たことも相まってか、"テムズビート"と呼ばれるようになった。 毎日だらだらして、音楽の話をして、レコードを買いに行って、 時間をかけてゆっくりとそそのかした結果、彼はDTMを始めた。 そこから驚くほど早いスピードで良いビートを作るようになったというのは、このアルバムがDTMを初めて1年くらいで出たものだと書けばお判りいただけるだろうか。

 彼がDTMを始めて少し経った頃、もらったデモにはたまにラップが乗っていた。 今までラップなんて全然やってなかったしそこまで聞いていなかったような彼が。 チャットマイクで録音されたその曲名は"urban city life"。 その曲名とは裏腹に、日常の諦めや気だるさが描かれたつたないラップは衝撃そのものだった。 ただこのリリックこそが彼の神戸での生活そのものだったというのは、彼のことを知っていたらすぐわかる事だった。

 神戸大橋。神戸市街と人口島ポートアイランドを繋ぐ橋。 その前で寝そべる彼がジャケットのこのアルバムは、PORTOPIA'81と名付けられた。 90年生まれの僕たちは華やかだったあの頃のことなんて知らない。 ただ僕らが知っているのは少し寂れた今のポートアイランドだ。

 どこも理想と現実が乖離している。かつてあったものや、今あったかもしれないものとの誤差はどんどん開いていて、神戸はそれを強く感じることのできる地方都市の一つだと思っている。 その差を埋めようとしたのがdj newtownならば、テムズビートはその差をじっと見つめた。

うまく行かないことは沢山ある。
だから今は寝る。


- tofubeats a.k.a. dj newtown