[MARU-031] dj newtown - high-school girl(we loved)



      「いっつも、あの頃のあの街はこんな温度でこんな音楽が頭でなってた。あの子は僕の遠くへ。でも僕はまだニュータウンにいる。」
      クラブ・ミュージックに疎いオレがなんでmaltineを聞いているか。 出会いはもう忘れたんだが、twitterはじめてハシャイでたころ、フォロワーが音楽やってるときは必ず聞いていたんだ。 もともとオレも音楽やってるし、素人の音楽聴くのだって楽しいからね。 で、なんかレーベルやってるやつがいて、しかもそのサイトデザインがわりかしクールだったんで、 数曲ポチポチしてみたんだ。 (今でもそうだけど、maltineの音源はダウンロードせずにサイト上で再生している。なんだかオレにとってマルチネはそうやって聞きたいんだ。) 最初に聞いた音源がどれだったかは覚えてない。でも丁度よくリリースされたdj newtownくんのトラックを聞いたときには狂喜したね。 (もちろんnewtownくんがトウフくんの友達だってことも知らなかった、というかクラブ・ミュージックに疎いオレはトウフくんさえ知らなかったww) なんつーか圧倒的にポップだった。キラッキラッしてた。すげー恥ずかしく言えば完全に一目ぼれだった(一聞ボレ?)。

      やっぱ、いちばんインパクトあったのは、2曲目のkeep you freshだね。 これがクラブ・ミュージックであることは分かってたし、cut upという手法もそれなりに理解してたと思う。 でもそんなことはどうでもよくなるほど、底抜けのポップさにオレは飛びついたわけ。 たぶん2009年の1月に一番聞いた音源がhigh-school girl(we loved)だったよ。 なんつーか今月のヘヴィロが CDとかじゃなくてネットの音源だってことだけでも革新的なわけよ。 それ以降、オレはmalitineの音源をことあるごとにディグるようになって今に至るわけであるんだが、 それはおいといて、曲の話をしようじゃないか。

      keep you freshは何らかのポップソング、どうもnewtownくん曰くとある 日本のガールズ・ダンスボーカルユニットの曲らしい。 元ネタに直接あたることはできなかったけど、おそらくサビとかフックにあたる部分をカットアップしたもだろう。
      要するにポップな曲の一番、濃いー部分を圧縮して、絞りきって、濃縮しきったトラックというわけだ!
      さらに言うとここでのカットアップは声ネタ+ウワモノの塊で、 あるビートを抜き出すブレイクビーツや一つの音ネタを使ったサンプリングとは 違ってより一層、ポップのエキスを感じるよね。 ビートの基本は4つ打ちでハウスっぽくあるけど、音の切り刻み方はヒップホップっぽい。 それもターンテブリストのバカテクっぽいほどテクニカルに切り刻まれているんだけど、 それでもおそらく元ネタにあっただろうポップさが失われてないというか、 むしろ向上しているあたりがnewtownくんのセンスのよさなんだと思う。

      この作品のヒップホップぽっさは実際のところ、1曲目から表れていると思う。 high-school girl(intro)ではロボットっぽいボイスで「ニュータウンに・・・」と歌われる。 匿名なヴォイスによって、これまた匿名なセカイにドロップされるトラック。 ファスト風土と揶揄されながらも、確実にその新しいセンスを醸造しているニュータウンという土地。 そういったフッドに対するレペゼンがこの最初のトラックに含まれていると思うんだ。 あとで知ったことだが、newtownくんは神戸あたりのニュータウンのトラックメイカーらしい。 俺は震災後にできただろうニュータウンと、そこでの何気ない十代の日常を彼の楽曲から感じるんだ。 トウフくんから伝え聞いた話では、newtownくんは地下鉄でいつも音楽を聞いているらしい。 街と街を結ぶ地下鉄がノードからリンクするネットワークという意味では、これはまさにネットワーク・ミュージッキングだね!

      さて3曲目の元ネタが相対性理論であることはさすがのオレでもすぐに気づいた。 やくしまるえつこの声の個性って、ある意味で没個性というか、それこそボーカロイドのような声をしているんだよね。 もともとサウンド的なヴォイスを切り刻むことによって、完全に楽器として鳴らしている。 だけど、逆説的にこの曲はリリカルなメッセージを持っているのがいいんだよ、ほんと。 トウフくんが言っていた「20人で飲むビールより4人で飲むコーラ」そんな気持をたぶん曲にしたんだよ。

      続いて4曲目のlove(we don't know)は固いキックの4つ打ちのラウンジだね。 BPMは結構速いけど、椅子に座りながらコークを飲んでおしゃべりするテンポにぴったしだ。 ヴォイスのサンプルが切り刻まれて配置されてるけど、そんなに違和感がなく全体的にうまくまとまってる。

      で次のN.E.W.T.O.W.N.は後半の山場だね。 裏拍のバスドラが強調された結構変わったリズムでクラブ向けというより ストリートっぽいカンジがする。踊るんだったワルツっぽくゆたっりと体を揺らしたいかな。 フィルで入るスネアのタイミングも面白いし、ウワモノはソウルフルなブラスだったりしてカラフル。

      そして事実上の最後の曲、high-school girl(we loved)は冒頭からイキナリの大ネタww オレは勝手にこれアスカとかの声だと思ってたけどどうも違うみたい。 面白いネタをひっぱてくるnewtownくんのセンスに脱帽。 いちおうこれ歌モノでもあって 「ニュータウンに住んでいるキミは今、どこで何をしているのかい?誰もいない駅前には」 というミニマルなリリックが結構センチメンタル。 密かにベースラインが結構シブイくて、リズムもトリッキー。まさに帰宅向き(笑)。

      最後のhigh-school girlのアカペラはもちろん、これを聴いたお前らが今度はトラックを作るんだというメッセージ。 ジャケも含めて全体を通してもやはり空想の郊外(とアイドルw)に対するレペゼンを感じる。 ネットというノンサイトスペシフィックな空間にいかにポップなサイトを構築するか? その回答の一つがこの作品だ!間違いない!

      死に舞